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  • 執筆者の写真小森智文

高齢者向け賃貸借契約書

 国土交通省が、賃貸住宅の入居者が亡くなった時に備えて、賃貸契約の解除権や、その住居に残された家財道具等の処分を第三者に、予め委任しておくための契約書の雛型を作成し、公表しました。

 マイホームを購入しても、日本の場合は自然災害も多いため、ローン返済中に災害に見舞われてしまうと二重ローンになってしまう危険性もありますので、賃貸住宅を借りて住むのがいいのかは、一概に言えないと思います。しかし、高齢者になって、新たに賃貸住宅を契約しようとしても、思い通りに借りることができないという現状もあります。




 国土交通省が、この雛型を公開した背景は、単身世帯の高齢者が増加しているものの、部屋を借りた高齢者が亡くなった場合、その契約を解除することの大変さや、住居内に残された家財道具などの動産の処分への不安から、高齢者の入居申込みを拒否することが見られ、その不安を払拭するためだそうです。


 国が、今後も増大が見込まれる単身の高齢者のことを配慮した施策を提案していることは、一定の評価すべきことだと思います。



 しかしながら、私がこの契約書の雛型に目を通して感じた点は、次のようなことです。

(1)契約書の内容が、専門用語で、長文である。

 雛型の中に、「委任者が死亡したことを停止条件として」という文面があります。一般の方、特に部屋を借りたいと思っている高齢者の方が一度読んだだけで理解できるのでしょうか?また、26ページにも及ぶため、これを読むだけでも苦労ですし、まして、これをすべて理解するとなると大変です。


(2)この契約書を主体で使う人が明確ではない。

 部屋を貸したい大家が、賃貸借契約を結ぶにあたり、部屋を借りようとしている方に、この契約書の締結を前提としているのか、それとも、借りたい方が、この雛型を利用して、部屋を貸してもらおうと働きかけをするのかが、今ひとつ理解できません。

 

(3)この契約書を活用するには、専門家が関わる必要がある。

 解説コメントも詳しく書かれてはいて、国土交通省が作成に苦心したという点は垣間見えますが、この3つからなる契約書の雛型と、賃貸借契約書を関連付けたり、大家(賃貸人)、借りたい人(賃借人)、委任内容を実行する人(受任者)、借りたい人の相続人(推定相続人)などにも、この契約書に関わり、理解してもらい、更に納得の上で署名・押印をもらうことは、かなり大変だと思います。また、この契約書は借りたい方が亡くなった時のことしか想定してませんが、認知症になってしまい、一人では生活できなくなったような場合や長期入院して、家賃を支払えなくなった場合などは触れられていませんので、そういうリクスを組み込もうとすると、相当手を加える必要があります。整合性の取れた契約書を作成するのであれば、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家への相談や作成依頼が必要になると思います。


 後のトラブルを避けるために、あまりにも内容が複雑になり過ぎたりすれば、それに漬け込んだ詐欺なども横行するでしょうから、高齢者にとって、よりシンプルで、わかり易いものを、国土交通省等を中心になって、更に用意してもらうのが、良いと思います。

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