厚生労働省が作成した資料によれば、2012年時点での認知症患者は462万人。2020年度は推計値ではありますが、675万人で、人口比率19%という数値が発表されています。
また、昨年12月の日経新聞の記事によれば、国内金融資産の2/3は60歳以上が保有し、2017年度では、認知症患者が約143兆円を有しているという試算があります。
判断能力が低下した人をサポートする制度としては、成年後見制度があります。
しかし、2018年末時点での法務省発表の成年後見制度利用者は、知的障害者等を含めても、全体で約22万人でしかありません。
先月、金融庁が「認知機能が低下した高齢顧客が銀行窓口での預金引き出しで困らないよう、一定のルールを設けた上で家族らによる代理を認めるなど、柔軟な対応を取るよう金融機関に求める方針だ」というニュースがありました。
これまで元気だったご両親が急に認知症の症状が出て、介護施設に入所してもらったり、自宅介護するために、バリアフリー改装したりしようと考え、その資金をご家族がご両親の口座から引き出そうとしても、銀行の窓口では本人以外は引き出せませんと断られることが増えている現状に配慮した内容だと思います。
一見、このニュースは問題解決につながるようにも感じます。しかし、成年後見制度の管轄は法務省、今回の金融口座への対応策を発表したのは金融庁です。金融庁は、家族による不正な支出を避けるために、病院や介護施設からの請求書を銀行窓口に提示すれば、直接それぞれの施設に振り込むことを想定しているようです。
今後、より高齢化が進む日本で、小手先だけの解決策ではなく、もっと国会や政府などで、省庁を横断した議論を行い、誰もが納得して、利用する制度を作り上げていただきたいと思います。
私は兄2人の成年後見人をしていて、成年後見制度に対し、抱いているだろう問題点など列記してみたいと思います。
①成年後見制度自体に馴染みがない
②成年後見制度の管轄が家庭裁判所ということで、何となくハードルが高い
③成年後見制度の申請手続の書類が多く、面倒だ
④成年後見制度の申請時に、鑑定が必要となった場合の鑑定料が高すぎる
⑤平日に家庭裁判所に出向いて、手続を行うことは仕事柄難しい
⑥全ての資産を家庭裁判所に開示することに抵抗がある
⑦大きな支出をする際に、家庭裁判所の許可を得ることが面倒である
⑧1年に1度、家庭裁判所への報告事務が面倒である
⑨事務管理が苦手である
⑩親族のお金を親族のために利用するのに、家庭裁判所等の指図を受けたくない
⑪永続的ではなく、遺産協議のときにだけ利用したい
⑫誰に、どこに相談すればいいのか、分からない
⑬少ない資産しかないのに、本当に成年後見制度を利用しないといけないのか
⑭専門家に依頼した場合、毎月費用がかかる
⑮専門家に依頼した場合、費用分の面倒を看てもらえるのか
⑯資産が底をついた場合、どうなるのか
成年後見制度の利用率の低さを考えれば、このような小さな問題点を一つ一つ解決していく必要があると思います。
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