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相続土地国庫帰属制度

執筆者の写真: 小森智文小森智文

 今月29日より、「相続土地国庫帰属制度」がスタートします。

 日本には、所有者が不明な土地が、九州の面積分程あると言われています。私も実際に、相続の業務依頼を受けた際に、不動産登記簿を確認したら、明治時代の登記のまま、全く所有者変更手続きがなされていないという事案を見たことがあります。

 戦前までの民法では、家督相続という制度があったため、家督を譲り受けた人が家長の地位と財産等を受け継ぐということが定められていましたが、戦後の民法改正で、遺言書が存在しない場合は、法定相続人が話し合って遺産分割協議書を作成し、それと基に財産を分割することになります。

 しかし、何十年間も放置していると、相続人であった人も亡くなり、更に、その相続人の地位を代襲する人が増えてしまい、収集がつかなくなってしまう状態になってしまいます。不動産の登記を行うおうとすれば、相続人の誰かが相続する旨の遺産分割協議書を作成し、登記簿に記載されている方の相続人全員から実印と印鑑証明書が必要になってしまいます。


 来年からは、相続登記が発生した場合は登記の義務化されることが決まっております。

 それに先立ち、この相続土地国庫帰属制度がスタートし、遠方で誰も管理する人がいないような土地を国に引き取ってもらう制度です。

 大都市圏であれば、すぐに買い手が見つかるかもしれませんが、地域や場所によっては、なかなか売却できないような不動産もあるかと思います。売却できず、毎年固定資産税だけを支払うという形では持ち出しになってしまい、冒頭に書いたように、そのまま放置すれば、その後相続人が増えてしまい、どうすることもできないような事態を避けるために設けられた制度です。


 ただ、決して、無条件で引き取ってもらえる訳ではありません。法務省のページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html)では、以下のような土地は引き取ることができないと明言されております。


【引き取ることができない土地の要件の概要】


(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

 A 建物がある土地

 B 担保権や使用収益権が設定されている土地

 C 他人の利用が予定されている土地

 D 土壌汚染されている土地

 E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

 A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

 B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

 C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

 D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

 E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地


 また、一筆ごとに審査手数料として14,000円が掛かり、申請をしてもしっかりと調査を行うために、すぐには許可される訳ではないようです。研修で聞いた話では、申請から1年程度が目安とのことだったと思います。更に、申請が認められれば、10年間分の管理費用が、別途発生します。


 通常、不動産の関連の業務は司法書士業務の範囲ですが、この制度は行政書士も携われることになっております。

 実際にスタートしてみて気づく問題点もあるでしょうから、制度の行方を見守りたいと思います。


 このような事態を避けるためにも、判断能力がしっかりとしている間に、遺言書で誰に相続させるのかを決めておくことも重要だと思います。

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