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成年後見制度の問題点

執筆者の写真: 小森智文小森智文

 11月14日のNHKのクローズアップ現代で、「親のお金をどう守る 認知症600万人の資産管理」というテーマで、放送がありました。これは、高齢者だけを焦点をあてた内容でした。

 また、最近では国連が、日本の法定後見制度は差別的であるとして、廃止すべきと勧告したというニュースや、成年後見制度の利用が進まない現状を踏まえ、政府は一時利用もできるようにすべきではないかという検討が進んでいるというニュースもありました。


 私は、兄達の成年後見人を15年家族の立場から、そして、今年、行政書士として成年後見人にも選任された専門家の立場から、成年後見制度の問題点を考えてみたいと思います。

 最近、受講した勉強会で、後見という言葉が歌舞伎などの黒子が語源ということを知りました。



 何故、成年後見制度の利用が進まないのかということを考えると、以下の理由が挙げられると思います。


  ①後見費用の申立が申立人負担であること

   本人に判断能力が低下してくれば、4親等以内の親族であれば、家庭裁判所へ申立が可能になります。しか  

  し、この申立を行う際の費用負担が、本人が支払うのではなく、原則、申立人が支払うことになっています。

  知的障害等で判断能力が低いお子さんの将来を案じて、親が申立をする場合は、親としては費用負担は仕方がな

  いと思うでしょう。しかし、これが、親が既に他界し、生計が別の兄弟が申立人となった場合や、ほとんど交流

  もない叔父や叔母などの申立を行う場合に、親族だからと言って、この費用を出したいと思うでしょうか?

   申立を行ったあと、裁判所が診断書以外に鑑定が必要と判断をすれば、別途5万円以上の鑑定料が掛かるとい

  う費用面の不透明さの問題があると思います。


  ②後見人選任の不透明さ

   家庭裁判所に対し申立を行う際、後見候補者を書いて提出することが可能ですが、これが必ず選任される訳で

  もなく、資産が多いと、親族後見の場合は不正に口座からお金を引き出すことが多いという理由だけで、弁護士

  や司法書士という専門家が選任され、一度審判がくだされると、これに対し、不服申立などを行うことができな

  いということも問題だと思います。

   専門家だから、不正を行わないという保証はなく、また、国家資格者だからという理由で、選任するのではな

  く、本人や親族に対しどのように接していくのかなど、選任する際には親族が納得するような判断して欲しいと

  思います。 

  

  ③「本人のため」という曖昧さ

   家庭裁判所や、後見人に選任された専門家などは、本人のために、財産を減らさないことが第一だと考えてい 

  ます。果たして、これは正しいのでしょうか?

   NHKの番組でも取り上げられたいましたが、本人は温泉が好きで家族旅行にも行っていたものを、専門家が

  選任されてからは、全く認められなくなったということです。本人が一家の大黒柱であれば、これまでは旅行費

  用も当然本人が出していたものでさえ認めなくなるというのは、如何なものかと思います。

   後見制度は、本人のために行うものであるはずです。それにも関わらず、本人の意思が確認できないという理

  由で退ける専門家などのスタンスに問題があるとしか言いようがありません。

   これこそ、国連で廃止を求められる原因だと考えます。

   また、家族が本人の資産がいくらあるのかということを聞いても、一切情報を開示しないというものも、私に

  は理解できません。適切に管理しているかどうかを家庭裁判所だけがチェックするのではなく、親族もチェック

  する立場にすべきだと思います。


  ④医的侵襲行為は親族の同意

   専門家の後見人が就任しても、手術などの医療行為についての同意権はないため、手術の際には親族の同意が

  求められます。これが、また、親族としては納得できないと思います。

   専門家として報酬を得ておき、身上監護も業務とされながら、いざ、一番大切な点だけは、同意権がないから

  と、そこだけを親族に任せるという点が、この制度の不備でもあると思います。


 専門家後見人は、単に財産管理しか行わないと思われないように、本人や家族、福祉関係者との関係を築くことが大切だと思います。

 今、検討されている後見制度の一時利用には、私は反対です。判断能力がない人が、遺産相続時だけに後見人をつけるだけで、本当に本人は守られるのでしょうか?それこそ、また数年後に、問題が起こると思います。

 今の専門家後見人が8割を占める状態から、積極的に親族後見を認めるように転換し、財産の不正流用等が発覚したり、管理能力に問題が起きたら、専門家後見に切り替えることや、もう少し、本人のためにしか費用を認めないという点については、資産や家族の状況等を踏まえて、もっと弾力的に判断すべきだと考えます。



 この記事を事前に準備していたところ、先週、交通事故で高次脳機能障害で判断能力が低下している方の自宅を、亡くなる前日に売却手続きを行った不動産屋に対し、親族が提訴したというニュースがありました。

 この場合、成年後見人の申立をしていれば、防げた可能性が高い事案だと思います。真相はこれから裁判を通じて、分かってくるでしょうが、後見制度のメリット・デメリットを考慮した上で、利用すべき場合は、躊躇わずに利用した方がいいと思います。

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