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執筆者の写真小森智文

任意後見人の横領事件

 先週のニュースで、任意後見人が、口座管理を任せていた人(被後見人)の口座から、数百万円を横領した疑いで逮捕されたというニュースがありました。


 私のホームページでは、成年後見制度について説明をしておりますが、改めて任意後見制度ということについて,

ご説明します。

 人は高齢になると、認知症などの症状などによって、物事が判断する能力が衰えてくる可能性があります。2000年に始まった介護保険制度は、ご本人自らが介護サービスなどの契約をしなければならず、判断能力が落ちた方は、本人に変わって判断をしてもらい、代理に契約等を行ってもらうようにするのが後見制度です。

 何の準備もせずに判断能力が落ちてしまった場合は、家庭裁判所に後見人の選任の申し立てを行う法定後見という制度を利用することになってしまいます。法定後見の場合は、いくら申立書に親族の後見候補者を記載をしても、最終的には家庭裁判所の判断で、見ず知らずの第三者の弁護士・司法書士などの第三者後見人が選任されてしまうことがあります。

 

 それに対して、任意後見制度は、ご本人が判断能力があるうちに将来に備え、ご本人が信頼できる人に、預貯金の管理や病院や福祉施設等の入居サービスの契約などを任せるという契約書を、公正証書という形で作成しておく制度です。公証役場で作成されたこの契約は、公文書という扱いになり、法務局に登記がなされる効力の強いものです。

 そのため、任意後見は本来、ご本人の状況を良く知っており、そしてお互いに信頼関係があるはずであるにも関わらず、このような事件が起きてしまうのは残念としか言えません。


 毎年、最高裁判所から、後見制度の利用状況について、報告書が作成され、インターネット上でも公開されております。(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html)

 昨年度の報告書に関しては、一番下のPDFファイルにありますが、これを読んでいただければ分かりますように、任意後見契約が実際に発動している件数は、日本国内で2,663件に過ぎません。

 これは、任意後見契約を結んだあと、ご本人の判断能力が低下し、家庭裁判所に対し任意後見監督人を選任した数ということです。

 

 このニュースは氷山の一角で、任意後見契約を結んで事前に通帳やキャッシュカードを預かり、ご本人が判断能力が落ちても、正式な任意後見を発動させていない可能性も十分にあるかもしれません。

 今回のニュースでは、任意後見自体は発動させていても、任意後見監督人のチェック機能が不十分だったのかということも考えられます。


 私も今年1件任意後見契約を受任しました。その方と知り合って10数年が立ち、ここ数年でかなり親しくなり、毎月ある会合では顔をあわせ、何かあればすぐに電話やショートメールなどでやり取りをする関係性を築いてきました。そうやって、お互いの信頼関係を築いた上に、任意後見契約は結ぶべきだと思います。


 私は、行政書士の外郭団体である一般社団法人コスモス成年後見サポートセンターに所属しております。この団体は、家庭裁判所や任意後見監督人への報告は年に1度行えば済むことを、3ヶ月ごとに報告が義務つけられ、更に賠償保険にも強制加入させられております。


 将来のことが不安で、任意後見契約を締結しようとする場合は、人柄が良さそうだというだけの理由ですぐに判断せず、しっかりとした団体に所属しているか、賠償保険への加入はどうなっているかも確認することが大切だと思います。

 私ごとですが、私は今年9月より、コスモスひょうごの会務にも携わるようになり、このようなニュースを読むと、より一層、信頼を得られる団体にできるような活動をしていかなければならないと感じました。

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